住民の声にすぐ対応、『きづきのはこ』
南区の桂川ハイツは、昭和50~52(1975~1977)年に建設された、約690世帯が入居する大規模な共同住宅です。日常生活で気づいたことを気軽に役員に届けられるよう『きづきのはこ』を設置するなど、年を重ねても安心して暮らせるよう様々な取組をされています。(参照:京都の自治会・町内会『困ったときのヒント集』Vol.2掲載事例)
令和5年度の管理組合役員の皆さんにお話を聞かせていただきました。
住民が多く、会議だけでは困りごとが把握できない
山口さん:桂川ハイツは5棟にわかれています。管理組合の役員には全棟役員(任期3年)と各棟役員(任期1年)があり、合計約40名で理事会を開催していますが、入居者が多いため会議だけでは日常的な困りごとを把握しにくいという課題がありました。そこで、約20年前から、各棟の玄関に『きづきのはこ』を設置しています。
各棟の棟理事役員は、毎月理事会の前に箱の中を確認し、その後の理事会で対応策を考え、可能な限りすぐに実行しています。投函者へも対応策についてお返事ができるよう、できるだけ記名をお願いしています。『きづきのはこ』は、理事会や総会に出せなかった意見や、日々の暮らしの中で気づいた問題点などを、いつでも誰でも投函できるので、すぐに解決されやすい、というメリットがあります。どういった意見があったかは、理事会の議事録にも掲載されますし、みなさんにも共有しやすいですね。
浅沼さん:『きづきのはこ』の中には、ペットや騒音などの近隣関係の問題も多く、本来は住民同士で解決していく内容なのですが、理事会で検討することで、役員みんなで一緒に対応策を考えることができます。ほとんどが困りごとですが、たまにお礼のお手紙が入っていると嬉しくなりますね。
入居50年、住民の高齢化が進んでいる
山口さん:入居当時は子どももたくさんいて賑やかでしたが、現在、小学生は約30人。近年は75歳以上の方が増え、独居も約170世帯あります。当初から管理組合もしっかり機能しており、コロナ禍以前は、花火や夏まつり、バス旅行など、活発に親睦活動を行っていましたが、コロナ禍で活動ができなくなってからは、できるだけ高齢入居者同士が顔を見せ合える活動を心がけてきました。
その1つが、各棟の玄関にベンチを置いたことです。近年、デイサービスの送迎車を待つお年寄りが増えたため、ちょっとした休憩場所として使われるようになりました。また、コロナ禍に大型スーパーから移動販売の提案があり、週に2回、団地内に移動販売車に来てもらうことになりました。近所にスーパーが少ないため、お身体の不自由な方や年配の方が利用され、これまで会う機会がなかった方同士が顔を合わせる機会にもなりました。コロナが落ち着いた現在も、生ものや重いものなどの需要があり、いつも来られる方の顔が見えないと部屋まで様子を見に行くなど、住民同士の見守りにもつながっているようです。
中町さん:入居当初から見ると暮らし方も変わってきましたし、役員も交替していきます。だから、その時その時の役員が『やってみよう』と思うことを1つずつ試し、良かったものは翌年以降も引き継ぎながら、これまで活動をつなげてきた、という感じですね。これからも安心して暮らし続けられる団地でありたいと思います。
【南区、約690世帯】
取材:令和5(2023)年8月24日
【取材後記】
世帯数の多い地域では、意見集約や合意形成にも大変な労力がかかりますが、『きづきのはこ』は共同住宅ならではのアイデア。誰でも気軽に意見を言いやすく、それに対して役員みんなで対応策を考えているところが参考になります。また、住民の暮らし方やニーズの変化に応じて、柔軟に対応策を考えていくことが、継続のコツなのかもしれません。