地域を見守るお地蔵さんのために地蔵堂を建立
山科区上花山町内会では、地域を見守ってこられたお地蔵さんを改めて大切に祀ることでコロナ禍の収束を図れないかと、令和2(2020)年、役員OBによる「サポート隊」が中心となり地蔵堂を新たに建立され、翌年には地蔵盆を再開されました。地域のため、子どものために活動を続ける「サポート隊」の皆さんにお話を伺いました。
抜群のチームワーク『サポート隊』
林さん:「長年野ざらしになっているお地蔵さんに、屋根でも作ってあげられないだろうか」という話が出たのは、令和2(2020)年11月の公園体操の帰り道の雑談からでした。私たちサポート隊が中心となって続けてきた月2回の公園体操は、公会堂前の広場で行っているので、コロナ禍で地域活動ができなくなった時も続けていました。
粟津さん:お地蔵さんは、公会堂の前に7体、その少し先に17体が祀られています。畑の畔から掘り起こされたものもありますし、大きさもバラバラですが、徐々にまとめられていったんでしょうね。私が子どもの頃は、お地蔵さんの周りを走り回って遊んだものです。今ではバチが当たりそうなことですが(笑)。
お地蔵さんに屋根を作りたい、という話は、以前から町内会でも出ていたのですが、なかなか実行に移せていなかったんです。昔から、疫病が流行ればお地蔵さんを祀っていたので、お地蔵さんのためになることをしたらコロナ禍も収束するのではないだろうか・・・と。やると決まれば動きの速いサポート隊なので、すぐにお寺の住職に相談し、寄付を募り始め、町内会にも相談しました。
児玉さん:町内会は、はじめはサポート隊のあまりの動きの速さに「すぐには決められない」という返事でしたが、話し合いのうえ、一部予算を捻出してもらえることになりました。結果、町内会から10万円、有志からの寄付34万円、合計約44万円が集まりました。大工さんにも破格の工費でご協力いただき、サポート隊メンバーも、工事中のお地蔵さんの移動、周辺の木の伐採や整地、前掛けの製作など、それぞれの得意分野を活かして協力し、発案から2か月後の令和2(2020)年12月20日には、立派な地蔵堂が完成しました。
長年の経験で町内会役員をサポート
粟津さん:ここまで協力し合えるのは、仲間意識が強いからだと思います。サポート隊は平成29(2017)年に町内会役員OBで結成したグループで、「老人のため、子どものため、地域のため」に活動しています。メンバーは、これまで長いこと役員を担ってきた地元農家の自営業者が中心で、地域のことをよくわかっています。例えば、毎年行われるお祭りでは、公会堂前で5升炊きの釜で3回、1斗5升のおにぎりを作って配ったり、これまでの地蔵盆でもテント張りから飲食の手配まで、あうんの呼吸で行ってきました。
林さん:公園体操は、サポート隊としての初めての活動で、平成29(2017)年9月に始めました。月2回、定期的に顔を合わせているので、そこで出たアイデアはすぐに実現しやすいですね。他にも、登校する子どもたちの見守りや、クリスマスのサンタクロース役など、メンバーそれぞれが地域で様々な活動を行っています。
地蔵堂を建立した翌年の地蔵盆も、サポート隊の後押しで復活しました。コロナも落ち着き、地蔵堂も新しくでき、ようやく地域の行事が再スタートできる、と思った矢先、町内会から「地蔵盆中止のお知らせ」が回覧されたんです。町内会では、子ども会が自然消滅し、役員の負担も大きいことから、行事の開催が年々難しくなっているようでした。そこで、公園体操の帰り道で、「子どもたちのために地蔵盆を開けないだろうか」という話になり、町内会に提案した結果、一緒に地蔵盆を開催することになりました。
児玉さん:毎朝、子どもの登校時間に旗振り当番をしているメンバーもいるので、町内会に入っていない世帯の子にも地蔵盆の呼びかけをしました。当日は子ども約50人が集まったかな。かき氷やフランクフルトを振る舞いました。参加された方々から約8万円のお供えが集まり、地蔵盆は多くの方が楽しみにされている行事だということを改めて実感しました。
粟津さん:私たちは長年の経験があり、ついつい地域を盛り上げようと熱く語ってしまうので、選挙で初めて町内会長をされる方は戸惑われるかもしれないですね。でも、お地蔵さんは地域を見守ってきた大切な存在。私たちはただ、地域のつながりを絶やしたくない、子どもたちに地蔵盆の楽しい思い出を作ってほしい…、という気持ちで動いたんです。若い人たちにも、「やっぱり上花山はいいところだな」、と思ってもらえるよう、これからも頼ってもらえる存在でありたいですね。
地域でのつながりを次の世代にも
児玉さん:サポート隊ができた背景には、町内会長の担い手がいない、という問題があります。もともと町内会には約200世帯が加入していたのですが、ここ10年で約半数が脱退するという危機的な状況になっているのが実情です。
粟津さん:この地域は昔から、農業を営む地元の人で、町内会や神社の役などを担ってきました。しかし、そのメンバーが高齢となった今も同じ人ばかりが役員に選出され、マンネリ化していたのも事実です。新しい若い人にも関わってほしい、という思いはありますが、平日の日中に仕事があるサラリーマンが多く、地域の会議や行事の準備の負担が大きいようです。若い世代とのギャップを受け止めた上で、みんなで地域のつながりを受け継いでいくにはどうしたらいいかを、毎年考えています。
林さん:町内会の3役は、70歳を過ぎると辞退できる、5年間役を免除できるなど、担いやすくするためのルールを少しずつ増やしてきたのですが、やはり、何も知らない人が町内会長になると大変だと思います。選挙で初めて町内会長に選ばれた方が辞退されたこともありました。その時に、過去5年間の役員OBで話し合い、サポート隊を結成することになったのです。初めて町内会役員になった方の負担を減らすため、長年の経験を活かして様々な活動を支えよう、と、町内会とは別の組織として立ち上げました。規則もなく、メンバーも固定していない、ゆるい団体で、できることを楽しく、出しゃばらないように、をモットーに活動していきたいと思っています。そのためには、町内会とサポート隊で話し合いを重ねながら、新しいやり方を一緒に考えて行くことも大切ですよね。
【山科区、加入約100世帯】
取材:令和6(2024)年7月10日
- 取材後記
地元農家を中心とした強い結束力で地域活動を支えて来られ、このつながりが次世代へ受け継がれることがサポート隊の願い。働き方や暮らし方が変わっていく中でも、将来お地蔵さんの目には、世代を超えて支え合う地域の未来が映るよう、試行錯誤で取り組まれていました。